3歳の男の子A君のママさんから、「うちの子、お片付けが苦手で…」と相談されました。
そのママさんは色々と言い方を工夫されているようで、お片付けの歌を歌って誘ってみたり、「おもちゃさんが、お家に帰りたがっているよ」「お片付けしないと、大事なおもちゃがなくなってしまうよ」と言ってみたりしているそうですが、A君には効果がなく、いつもお部屋の中がおもちゃのお祭り状態(?)になってしまっていて、仕方なくママさんが全て片付けているとのこと。
その時、私は以前読んだ、『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』という本の内容を思い出しました。
『アドラーの思い出』(柿内邦博ほか訳、創元社)という本の中にアドラーの次のような忘れられないエピソードが紹介されています。
アドラーと知人が知り合いのF夫人の家に招待された時のことです。3人で一緒に街に出かけ、その後軽食のために戻ってくることになっていました。
出かける時、5歳くらいのF夫人の息子は「行ってらっしゃい」と3人を送り出してくれました。帰ってみると、居間の床におもちゃが所狭しと散らかっていました。Fさんの息子が、ありったけのおもちゃを足の踏み場もないくらいばらまいていたのでした。
F夫人が、みるみる動揺して赤くなり、今にも息子にイライラをぶつけそうになった時、アドラーは、その息子に近づき、優しく彼を見て「上手におもちゃを広げたね。同じように上手におもちゃを集められるかな?」と言いました。
1分も経たないうちに、すべてのおもちゃは、元の棚に片づけられました。あるタイプの心理学者ならば、子どもに近づいて、「坊や、さびしかったんだね。おじさんがママを連れ出したりしたから、腹が立ったのかな?」と言ってから、「でもね、こんなことをしたらいけないよ」と説教するかもしれません。
しかし、子どもと対等の立場に立ち、子どもの可能性を信頼し、置かれた状況を「子どもの目で見、子どもの耳で聞き、子どもの心で感じる」ことができた、共感能力の高いアドラー。
初めて会った子どもに「上手におもちゃを広げたね。同じように上手におもちゃを集められるかな?」と言い、誰をも傷つけることもなく、子ども自身の問題解決能力を引き出したのです。岩井俊憲著『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』より引用
この話をママさんにお伝えしたところ、早速試してもらえましたが、結果は、「ママがお片付けして!」と言われてしまったとのこと…。
今回、ママさんも一緒にいる時に、私がこの「上手におもちゃを広げたね。同じように上手におもちゃを集められるかな?」という言葉をA君に言いました。
すると… A君は細かいパーツのあるおもちゃを袋に入れて、
トーマスのおもちゃたちをかごに入れて…(撮影のご許可をいただいています)
おもちゃのお祭り状態だったお部屋が、みるみるうちに、すっきりと綺麗に!!
A君に私が「上手にお片付けできたね!すっきりして気持ちがいいね!」と言うと、A君もニコニコと嬉しそう(*^^*)
A君ママも、「いつもと違う人に言ってもらう、というのもポイントなのかもしれませんね!」とニコニコ(*^^*)
いつも元気いっぱいのA君、これからもお片付けもがんばって、楽しく遊んでね♪
#アドラーの本名はアルフレッド・アドラー。『人を動かす』『道は開ける』などのベストセラーを著したデール・カーネギーや、『7つの習慣』のスティーブン・R・コヴィーらに影響を与えた心理学者です。欧米では、フロイト、ユングと共に「心理学の3大巨頭」と呼ばれています。